シニア従業員と2025年問題

コミュニケーションとコンプライアンスの両面から人と組織の無限の可能性を引き出すビジネスコーチ&社会保険労務士の光武哲郎です。

 

昨今、企業様よりご相談が増えているのがシニア従業員の活用法についてです。

 

人手不足からの働き手の確保という物理的な要因や、国が70歳までの就業確保を努力義務化させることなど、今後企業においてシニア従業員の活用の仕組みをどう設計するかは非常に重要な課題となってくると予想されます。

 

今年4月より中小企業でも始まった同一労働同一賃金(改正パートタイム・有期雇用労働法)の影響を契機として、シニア従業員(主に60歳前後)の定年後の雇用条件、特に賃金設定についてのご相談を多く頂いております。

 

「定年後も同じ業務をしているのに賃金に違いがあるのはおかしい」として争いになった長澤運輸事件最高裁判決(平成30年6月1日判決)の判断からも分かるように、これまではたとえ定年前後で業務が同じであっても、定年後に嘱託社員等として雇用する場合、その賃金を引き下げることはある種の雇用慣行として認めらてきました。

 

しかし、2025年(女性は2030年)以降、老齢厚生年金の支給開始年齢が原則65歳からとされることにより、同様の争いがあった場合、司法が異なる判断をする可能性があると言われています。

 

それは、長澤運輸事件最高裁判決において、定年後の賃金引き下げが不合理ではないとされた理由に「老齢厚生年金の支給を受けられること」が挙がっていたからです。

 

もし今現在、定年前後で業務が変わらないにもかかわらず定年後再雇用者の賃金を引き下げることが会社の雇用慣行となっている場合、改めて賃金設計の見直しを検討する必要があるかもしれません。

光武社労士事務所