前回に引き続き体験デザインの記事です。
皆さんはドラゴンクエスト(以下、ドラクエ)と聞くとどういうイメージがありますか?
- 懐かしい〜
- 遊んだことない
- 今まさにやってる!
- 最新作が楽しみだ。
など様々な印象を抱くでしょう。
そんなドラクエは「RPGの教科書」となるほど後世のゲームに大きな社会的現象を与えた革命的なエンターテインメントです。今現在もなお大きな影響を与え続けています。
私自身もドラクエと聞くと学生の頃に夢中になってやった記憶が蘇ります。最近はあまりゲーム自体をしなくはなりましたがゲーム内に出てくるキャラクターや呪文、モンスターの名前なども記憶に残っている部分が多く、当時は部活から帰宅してから夜遅くまで夢中になってプレイしていました。
今思うとなぜあそこまで夢中になってプレイしたのか? それをゲーム内に散りばめられた体験デザインの目線から紐解いて行きたいと思います。
直感デザインの奥深さとその課題
直感と体験学習で覚えてもらう
ドラクエはRPGというゲームジャンルの性質上、スーパーマリオなどのゲームと比較すると覚えなければならないルールや用語などがどうしても多くなります。
まず画面右上にあるコマンド(はなす、じゅもん、どうぐ、つよさ、etc…)の使い方を覚えなければいけません。それが苦痛とならないようにドラクエでは様々な工夫を凝らしています。
モンスターとの戦闘やマップの移動などで報酬(t経験値、お金、目的地)を獲得することを目標としながら、様々なコマンドやゲーム内のルールを学習していきます。
実に緻密に計算された直感デザインにより、非常に覚えることが多いドラクエのルールを苦痛なく飲み込めるように設計されています。
直感デザインの問題は「飽き」
しかし、初めは新鮮だった直感型の体験も予測がつくようになると徐々にプレイヤーへの刺激は軽減されていきます。
そんな中でも、予想外の強敵に巡り合ったり、新しいアイテムを拾ったり、新しい技を覚えていくことでいくらかの刺激はあるもののゲームをプレイし始めた当初ほどのワクワク感を再度体験させることは難しいことが多いでしょう。
しかしドラクエにおいてはある種飽きることさえもデザインされているのです。
予測をさせる
コマンド操作による体験を繰り返し行うことで、プレイヤーは徐々に「このコマンドは何が起こるんだ?」という未知の状態から、「こういうときはこのコマンドだ」という思考に変化していきます。
コマンド操作により引き起こされた結果を繰り返し経験することで予測がつくようになるのです。
また、これはコマンド操作だけでなくゲーム全体の流れにも当てはまります。 マップへ出る→モンスターと戦う→レベルアップする→目的地へ→ボスを倒す
という流れが繰り返されることをプレイヤーは無意識に理解して、徐々に予測し始めます。
そして、延々と繰り返しの刺激は飽きに変わります。 この飽きをうまくデザイン出来ない場合、プレイヤーはゲームをプレイすることを辞めてしまうでしょう。この飽きがない状態こそがまさに「夢中」の状態なのです。
予測を外させる
夢中をデザインする時に不可欠なのが「驚き」なのです。
プレイヤーにあえて予測をさせてそれを外させることで、今後もこれまでの繰り返しであるという負の感情に意図的に刺激を与える必要があります。
これが夢中をデザインするうえでもっとも大事なことなのです。
驚きをデザインする
ドラクエにおいての驚きとは?
ではドラクエにおいて驚きとはどういったカタチでデザインされているのか?
その代表的なものが「ぱふぱふ」です。
ドラクエをプレイしたことがある方なら誰もが記憶に残っているのではないでしょうか? そして同時にドラクエというゲームに置いてぱふぱふの異質感も記憶に残っていると思います。
驚きがどういう効果をもたらすのか?
体験学習の先に獲得できる報酬に予測がつくようになった途端に、人間は飽きを意識し始めます。
仕事や生活の先に待つ報酬(お金や安心)は必需品のため飽きていても我慢できますが、ゲームは人間にとって生活必需品ではありません。故に「飽き」=「プレイヤーとの関係性の消失」に直結します。
なのでゲームには驚きが必要なのです。
これまで何度か予想を裏切られたプレイヤーは「辛い冒険(学習)の連続の果てには非日常で予想外のものが現れる」という期待を持っているのです。そして、この期待が飽きをこさせない大事な要素なのです。
ぱふぱふの他にもドラクエには驚きのデザインが数え切れないほど散りばめられています。
- 物語のラスボスである竜王から「仲間になれば世界の半分をやる」という予想外の勧誘を受ける
- 重要なアイテムを持つ盗賊が牢屋から脱獄した!行方を追うために世界中を駆けずり回るが牢獄内に隠れていただけだった。
- ドラクエ3で異世界へ飛び立つ展開に!その異世界はなんとドラクエ1の世界だった!
こういった驚きは直感のデザインで疲れや飽きが溜まったプレイヤーに対して非常に効果的です。
そして、次に待ち受けるであろう驚きを期待してまた予測を繰り返しながら、体験学習に身を投じる。
これがプレイヤーの夢中を生み出しているのです。